興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
そんな…。

「え…、嘘です。私ちゃんと見ました聞きました。私が課長を見間違えるはずがありません。だって…あれは…お母さんがチューしたとか…そういうのも聞いたんです。聞こえたんです。ちゃんと、この耳で、チューしたって、聞きました」

話してる事、ハッキリ聞こえた。

「あー。待て。いいから、ちょっと待て。内容そのもは合ってる」

「ほら、合ってるじゃ…」

「だから、いいから俺の話を先に聞いてくれ。まずそこからだ」

「だって…女の子…ご褒美のチューって…パパって…」

忘れもしない…あれは、可愛らしくて…微笑ましい光景だった。

「だから、待てと言っている。いいから黙って聞きなさい」

「…はい」

何だか仕事で注意されたみたいでシュンとなった。今、…合ってるって認めたじゃないですか。

「あー、ごめん。別に叱った訳じゃないんだ。ごめんごめん。とにかく話を聞いて欲しいんだ。そうすれば誤解も解ける。誤解なんだ。はぁ。あー…、何から話したらいいんだ…。そうだ。まず女の子の話からだ。あの子は葵…、俺の双子の妹、葵の子供だ」

「え?」

「俺には双子の妹が居て、あの子は妹の子だ。俺の事をパパって呼んでいたのは、まあ、愛称みたいなものなんだ。…まさかそれを聞いていたとは。それでそのまま思い込んだんだな。
父親の事はお父さんと呼んでいて、その父親は今は海外勤務なんだ。そいつとは学生からの腐れ縁みたいな関係でもあるんだけど。
それでだな、葵が二人目を妊娠したんだけど、ちょっと危なくなって入院する事になった。だから、俺が娘を預かって暫く世話をしていた。葵のマンションに通ってたんだ」

「あ、あ、…」

そんなぁ……。では、課長は、あの子の伯父さんって事?…。今の話が本当ならそうなる。
そんな…なんて…事、…そんな~…そんな。……本当に?じゃあ私の…思い込み?

「だから…、俺の話を聞いて欲しいと言ったんだ。そしたら、こんな、誤解を生むこともなかったはずだぞ?あー、誤解はとうにしてたんだよな。だけど、話が出来ていたら、とっくに解決していた事だ」

私のこの…馬鹿みたいに、抑えようと…閉じ込めようとした気持ちはどうしたらいいの…。
もう終わらせると決めたのに。でも、思いは一方的な物で…。

「はぁ、…他に聞きたい事はないかな?」

黙って首を振った。

…そんな、…そんな。とんだ早とちり…思い込み。あの様子を見て結婚するんだって、想像を膨らませた…疑いもしなかった。

「…藍原…俺は改めて始める感覚なんだ。さっきの話に戻すぞ?話したかったことはこの話だからな。
今まで仕事にばかり追われていた。…不器用なんだ。仕事、頑張らなきゃと思ったら、全てが仕事になっていた。今だって器用じゃないが、今なら落ち着いて恋愛が出来ると思う。…結婚だって。
藍原…俺はそんなお年頃なんだろ?藍原が言ったんだぞ?」
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