夢を忘れた眠り姫
これまたもう何度も目にしたお馴染みのキーワードが盛り込まれているな、とどうでもいい事を考えながら貴志さんの話に耳を傾けた。


「そして会社の更なる発展の為に、奴は周りの意見に従って27才の時に相手と籍を入れ、それを大々的に外部に周知する為の豪華な式と披露宴を行った。だけど水面下では俺の母親との交際も続けていたという訳だ。もちろん、母親の方も納得ずくでな」


貴志さんは淡々と両親の歴史を語る。


「そして、正妻が長男を産んだ直後に母親の方も妊娠が発覚した。いや、俺の誕生日を考えれば本当はそれよりも前に気付いていた筈だけど、きっと堕胎できる期間が過ぎてから奴に報告したんだろうと思う。あらゆる面で計算が働く女だから」

「え。そ、そんな…」

「別にフォローしようとしなくていいから。で、不倫関係まではどうにか誤魔化せても、さすがに子供が産まれてしまったらそれを隠し通すことはできない。そこで奴は本妻と、その時まだ存命だった自分の両親に事実を告げたんだ」


私が紡ごうとした言葉を速攻で遮り、貴志さんは矢継ぎ早に捲し立てた。


「夫には愛人がいたこと、そして自分が妊娠中にもその女とバリバリやりまくっていたということを、生後数週間の乳飲み子を抱え、精神的にも肉体的にも疲弊しまくっている時期に正妻は知ってしまったという訳だ。その怒りや衝撃はいかばかりだったか」


その言い草に私は思わず赤面した。
< 101 / 277 >

この作品をシェア

pagetop