夢を忘れた眠り姫
しかもそれぞれのジャンルでもれなく権威ある文学賞を受賞している。

物書きからしたら、まさに『雲の上の存在』と位置付けられる人。

……私ももちろん、その評価自体に異議を唱えるつもりはない。


「今回貴志さんに打診された見合い話の首謀者が、大文字なんですか?」

「ああ」


なんてこった…。

どうして今日はこう次から次へと、私に何らかの縁がある人物の名前が出て来るのやら。


「ちなみに、この件は極秘事項だから、くれぐれも内密にしておいて欲しい」


貴志さんは神妙な声音でそう告げた。


「そのじいさん、自分から発信しておきながら同時に箝口令を敷いているらしいから。職業柄、必然的に出版関係者に声をかけることになるけど、『もしこのことを周りに吹聴したり勝手に記事にしたりしたら、君の出版社には二度と原稿を渡さない』と脅してな」

「……え?あ、はい。もちろん。誰にも言いませんよ」


自分の世界に入っていた私は間を置いてから答えた。

そんなトップシークレット、うかつにバラして自分の首を絞めることになったりしたら嫌だし。


「で、なぜ大文字清太郎がそんな見合い話を進めているかというと、世間には公表していないけど、実は彼は昨年ガンに冒されたらしいんだ。といっても発見が早かったので、初期も初期だったらしいけど」

「え…」
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