夢を忘れた眠り姫
思わず吐き捨てるように、憎々しげに言葉を発してしまった。
だって、小説っていうのは自分が苦労して生み出した、我が子ともいうべきもの。
そんな大切な宝物を駆け引きの材料に使うつもりだなんて。
大御所の作家のくせに、物書きとしてのプライドはないのかと言いたくなる。
反対にいえば、そんなプライドもかなぐり捨てるくらい、一人で勝手に切羽詰まっているのかもしれないけれど。
「あ、ああ…」
不快感丸出しの私のリアクションにとても戸惑ったように返答してから、貴志さんは話を続けた。
「大文字の遺作を発表できる事になったら、その出版社は大いに潤うからな。作品自体の収益を期待できるのはもちろんのこと、後々まで威光を振りかざす事ができる。担当者達はすぐさまその情報を会社に持ち帰り、上層部に報告した。隅谷書房も例外ではなく、当然のことながらトップであるアイツの元までその話は伝わり、そして俺に打診して来たという訳だ」
「本妻さんの息子さんではなく、貴志さんに白羽の矢が立ったんですね」
「ああ。あっちにはすでに婚約者がいるから。しかも来年…今からだと半年後に式を挙げる予定らしい」
「あ、そうなんですか」
それじゃあダメだよね。
『現時点で恋人がいないこと』というのが条件の一つなのだから、婚約なんてしていたら速攻弾かれるだろう。
だって、小説っていうのは自分が苦労して生み出した、我が子ともいうべきもの。
そんな大切な宝物を駆け引きの材料に使うつもりだなんて。
大御所の作家のくせに、物書きとしてのプライドはないのかと言いたくなる。
反対にいえば、そんなプライドもかなぐり捨てるくらい、一人で勝手に切羽詰まっているのかもしれないけれど。
「あ、ああ…」
不快感丸出しの私のリアクションにとても戸惑ったように返答してから、貴志さんは話を続けた。
「大文字の遺作を発表できる事になったら、その出版社は大いに潤うからな。作品自体の収益を期待できるのはもちろんのこと、後々まで威光を振りかざす事ができる。担当者達はすぐさまその情報を会社に持ち帰り、上層部に報告した。隅谷書房も例外ではなく、当然のことながらトップであるアイツの元までその話は伝わり、そして俺に打診して来たという訳だ」
「本妻さんの息子さんではなく、貴志さんに白羽の矢が立ったんですね」
「ああ。あっちにはすでに婚約者がいるから。しかも来年…今からだと半年後に式を挙げる予定らしい」
「あ、そうなんですか」
それじゃあダメだよね。
『現時点で恋人がいないこと』というのが条件の一つなのだから、婚約なんてしていたら速攻弾かれるだろう。