夢を忘れた眠り姫
自分へのご褒美にコンスタントにスイーツを堪能する機会は設けているけれど、それは家でくつろぐ時のお楽しみと決めている。


「あ、それじゃすみません。私はお先に…」


言いながら、私はしずしずと立ち上がった。


「うん」

「また後でね~」


手を振りつつお見送りして下さる先輩方に会釈して応え、私はトートバッグと空になった牛乳パック、サンドイッチの容器を手にテーブルから離れた。

それらを出入口付近に設置してあるゴミ箱に分別しながら投入し、社食を後にする。

どんなにおしとやかにゆっくりのんびりモソモソと食べ進めたとしても、パンと牛乳だけなのだから当然、皆さんより早く食べ終わってしまう。

先輩方がデザートを頬張っている姿を黙ってじっと見守っているのも何だし、皆さんも気を使うだろうから、私は歯を磨くという名目でいつも先に席を立っていた。

今日も混雑の時間から外れ、貸し切り状態の化粧室の洗面台でゆったりと歯を磨き、ついでに用をたしてから自分の所属する庶務課へと向かった。

はぁー、しっかし、すこぶるかったるぃわぁ…。

うら若き乙女らしからぬモノローグを浮かべながら廊下を進む。

あの夜以降『マズイマズイッ。早く次の住処を見つけなければ!』と気が急いて、時間があればネットで賃貸情報を検索しているのだけれど、案の定、自分にとってのドストライクな物件はなかなかヒットせず。
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