夢を忘れた眠り姫
「だけど、いくら条件に当てはまっているからといって、俺は所詮『愛人の子』だからな。他にいくらでも育ちの良い候補者は見つかるだろうし、大文字が溺愛している孫娘にわざわざそんな男を宛がうとは思えないけど」

「え。そんなの、本人の資質には全く関係ないじゃないですか」


私は思わず反論した。


「貴志さんは努力して今の地位を手に入れた。それだけで称賛に値する人物ですし、そして孫娘本人が貴志さんに惹かれ、結婚相手として選んだのだったら、大文字は余計な横やりは入れないと思うんですけど」

「……母親と同じようなことを言うんだな」


彼は一瞬複雑そうな表情を浮かべた。


「どういった結末になるかは孫娘の気持ち次第なんだから、とにかくエントリーだけはしておけとしつこく迫られている」

「い、いや、それを決めるのはあくまでも貴志さん本人ですが…」


ただ、彼の自己評価があまりにも低過ぎるので、その点訂正せずにはいられなかったのだ。


「とにかく俺は見合い話を受けるつもりなんてさらさらない。こっちこそ、自分の出生の秘密を見知らぬ他人に気軽に明かしたくはないからな」

「そう、ですか…」

「しかしその孫娘は、今回の縁談について、一体どう思っているんだか」


貴志さんはため息混じりに呟いた。


「どうせじいさんの言う事に大人しく従っているだけの、従順で気弱なお人形さんなんだろうけど」
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