夢を忘れた眠り姫
「え。そ、それはどうなんでしょうか?」
私は再びついつい言い返していた。
「大文字とお孫さんは今まで交流らしい交流がなかったんでしょう?話を聞いている限りでは、病気療養で暇になった途端、それまでほったらかしにしていたお孫さんにいきなりすり寄って、しかも気まぐれに思い付いたお見合い話を本人の意向そっちのけで勝手に進め始めたように思えるんですが」
「……まぁ、担当者もいきなりそんな話を持ちかけられて大いに戸惑ったらしいけどな」
数秒間思案したあと、ふと思い出したように貴志さんは解説を始めた。
「一番長い期間大文字を担当していた編集者いわく、原稿取りや打ち合わせの際、基本的には通いの家政婦さんが対応してくれるけど、時たま、今は亡き奥さんが小さな女の子を伴って姿を現す事があったらしい。だから大文字が既婚者で娘が一人いるということは各出版社把握しているけれど、それ以上の詳細は掴めなかったらしい」
「…雑談の中で話に上ることはなかったんですかね?」
「すごく気難しい性格で、打ち合わせ中にうかつな質問をしたりすると『そんなこと作品作りには関係ないだろう』とピシャリとやられたらしいから。当然、プライベートな様子が垣間見えてしまうような取材も頑なに断っていた。だから大文字家の内部事情は今まで謎のベールに包まれていたんだ」
私は再びついつい言い返していた。
「大文字とお孫さんは今まで交流らしい交流がなかったんでしょう?話を聞いている限りでは、病気療養で暇になった途端、それまでほったらかしにしていたお孫さんにいきなりすり寄って、しかも気まぐれに思い付いたお見合い話を本人の意向そっちのけで勝手に進め始めたように思えるんですが」
「……まぁ、担当者もいきなりそんな話を持ちかけられて大いに戸惑ったらしいけどな」
数秒間思案したあと、ふと思い出したように貴志さんは解説を始めた。
「一番長い期間大文字を担当していた編集者いわく、原稿取りや打ち合わせの際、基本的には通いの家政婦さんが対応してくれるけど、時たま、今は亡き奥さんが小さな女の子を伴って姿を現す事があったらしい。だから大文字が既婚者で娘が一人いるということは各出版社把握しているけれど、それ以上の詳細は掴めなかったらしい」
「…雑談の中で話に上ることはなかったんですかね?」
「すごく気難しい性格で、打ち合わせ中にうかつな質問をしたりすると『そんなこと作品作りには関係ないだろう』とピシャリとやられたらしいから。当然、プライベートな様子が垣間見えてしまうような取材も頑なに断っていた。だから大文字家の内部事情は今まで謎のベールに包まれていたんだ」