夢を忘れた眠り姫
ため息混じりに呟いた貴志さんに冷静にそう返す。


「……彼女達って、そんなに影響力があるの?」

「ええ、そりゃもう」


力強く肯定してから解説を始める。


「お二人は同期入社で勤続年数10年、女性社員の中では中堅処に位置し、なおかつ庶務課所属という立場上、全部署の社員と接する機会があり、社内のあらゆる事情に精通しています。また、元々の社交的な性格も手伝って、社員達の連絡先を当たり前のようにナチュラルに次々とゲットしていって、定期的に開催している飲み会等への参加を促しているんです。そうしてどんどん交流が深まっていくと。なので、そういったイベントに気軽に参加できる若手独身社員達のまとめ役というか、リーダー的存在に君臨しているんですよ」

「なるほどな…」


貴志さんは合点がいった表情で頷いた。


「つまり彼女達が何らかの情報を発信すれば、そのネットワークを通じて、社内の隅々まで瞬く間に拡散していくってことか」

「仰る通りです」

「何だか…。つくづく君には申し訳ないことをしてしまった」


とても神妙な表情でそう呟き、貴志さんは続けた。


「俺のせいでこんな面倒なことになってしまって。しかも時期が来たら、俺達は別れたという事にしなくちゃいけないんだから、その時にまた周りが騒がしくなりそうだ」

「そうですね。でもまぁ、仕方がないですよ」


私はあえて軽い口調で返答した。
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