夢を忘れた眠り姫
「その時はその時。もう、なるようになれですよ」

「……ホント、意外とハートが強いよな、君って」

「だって、社内恋愛の破局なんて、巷には溢れかえっている話題でしょうし。『そこはあまり触れてくれるな』っていう態度でいれば、さすがに皆さん気を使って必要以上に言及はしてこないでしょうから、大丈夫ですよ」

「そういうもんなのかな…」

「それに、『偽りの婚約者作戦』は私も承知の上で始めたことなんですから。貴志さんだけのせいではないですよ。破局した時に、同じようにダメージをくらうんですから」

「でも、何となく、女性の方が好奇の目で見られやすいっていうか……。いや、これは男女差別か」


自分で自分の発言にツッコミを入れながら貴志さんは首の後ろをサワサワと撫で、話を進めた。


「しかしそうなると、すぐに別れた事にする訳にもいかなくなったな」

「え?」

「母親が例の見合い話を断念するまで…つまり数ヶ月くらいの間は恋人のフリをしてもらうつもりだったけど、もう少し、長いスパンで考えておいた方が良いかもしれない」

「長いスパン…ですか?」

「ああ。俺達の意思ではなかったとはいえ、これだけ周りを騒がせておきながら短期間であっけなく別れたりしたら、すこぶる飽きっぽい性格なのかと思われるだろうし。下手すりゃ恋愛に対して奔放なのかと」

「そう…ですねぇ…」
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