夢を忘れた眠り姫
「だからせめて、一年くらいはもたせておいた方がいいんじゃなかろうかと思うんだけど」


貴志さんのその提案に、しばし考えてから回答した。


「分かりました。それじゃあ、私の貯金がある程度貯まって、ここを出る時にこの作戦も終了させましょうか」

「ん?」

「すぐにどうこうってのは無理だと思うんですよ。それこそ一年くらいは準備期間をいただかないと」


今回の引っ越しで結構な額、貯えが削られちゃったからな…。

もちろんさすがにゼロにはなってないし、毎月のお給料でまた徐々には増やしていけるハズだけど、当初自分が目標にしていた貯蓄額からはだいぶ遠ざかってしまった。

そして例の件の支払いで、今後も出費がかさんで行くのは明白だし。

正直それだけの猶予をもらったとしても、独り立ちできるまでになっているかどうかは怪しいけど。

でも、いつまでもだらだらと貴志さんに甘え続ける訳にはいかないもんね。

やはりタイムリミットはきちんと定めておいた方が良いだろう。


「一年後、私はもう新人といえる立場ではなくなっていて、貴志さんも昇進を意識するお年頃になっていますよね。それでお互いに仕事に本腰を入れるようになり、忙しくなってすれ違いが増えて、何かトラブルがあった訳ではないけれど縁が薄かったということで別れを選択した、という風にするのがベストかと」
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