夢を忘れた眠り姫
「あ、はい…」


ようやく口から出た私の返答を背中で聞きながら、貴志さんは一旦リビングを出て行った。

数分後、シャツとジーパンというラフな格好に着替えて再び現れ、そのままキッチンへと向かう。


「……またそれですか?」


先に夕飯を食していた私は、貴志さんが棚から取り出したカップラーメンをカウンターの上に置いた所で思わず問いかけてしまった。


「え?うん。今から作るのも面倒だし」


やかんを手に取り、蓋を外しながら彼は答える。


「それに、ろくな食材がないんだよね。パンと野菜はまだ残ってるけど、それは朝食に回したいし。明日買い出しに行かないとな。ひとまず今夜はこれで済ませるよ」

「でも…栄養的に大丈夫でしょうか?」

「いや、バリバリよくないだろうね」


貴志さんは苦笑しながら続ける。


「普段きちんとした食生活を送っている人が、たまに口にするっていうんだったら特に問題はないだろうけど、俺の場合他の食事も基本的に出来合いのものばっかりだから。せめて野菜を一緒に摂ればいいんだけど、その用意をするのが何しろ面倒で」

「あの、それでしたら…」


私はそこで遠慮がちに提案した。


「昨日おかずの作りおきをしたんですけど、まだまだストックがありますから、よかったら召し上がりませんか?」

「え?」


とても意外そうに目を見開いてから、貴志さんは問い返した。
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