夢を忘れた眠り姫
「ホントうまかった。ごちそうさまでした」

「いえいえ。お粗末様でした」


改めて繰り出されたお礼の言葉にそう答えつつスペースを譲り、私はそのまま自分の部屋へと引っ込んだ。

お腹が落ち着いてからお風呂に入り、自室でスキンケアを済ませてキッチンで歯磨きをし、歯ブラシを濯いでティッシュで水気を拭き取っていると貴志さんも姿を現す。

私と入れ違いで突入したバスタイムを終えて水分補給に来たのだろう。

男の人はやっぱ入浴時間が短いな、と思う。


「私、もう寝ますね」

「ああそう、おやすみ」

「はい。おやすみなさい」


ダイニングですれ違いながらそう挨拶を交わし、私は宣言通りにそのまま床に就いた。

なんせ激動の一日だったから…。

貴志さんとの『お付き合い発覚フィーバー』に加え、今日が仕事納めだったので、担当業務をすべてキリの良い状態にしておかなければならず、いつも以上に優先順位を考えて処理を進めて物理的にもあっちゃこっちゃ動き回っていたもんだから心身共にクタクタになってしまった。

なので布団に入った途端、まるで気を失うようにストンと眠りに落ち、朝までその状態。

そしてセットしておいたアラームの音でパチっと目が覚めたのだ。

やはり昨夜も夢を見ることはなかった。

でも期待もしていなかったので、特別落ち込むこともなく起き上がり、布団から出る。
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