夢を忘れた眠り姫
「あ、そうなんだ」

「はい。それで家賃が同額では不公平だから、差をつけようって話になったんです」


最初は『何のことやら』と思ったけれど、すぐにその詳細は掴めた。

どうやら貴志さんは今まで誰かとルームシェアをしていて、その相棒さんが、来月どこかへ転勤になってしまうらしい。


「それで、広くて日当たりの良い方を使わせてもらう代わりに俺は7万5千円、相手は5万5千円を負担する事になったんです」

「なるほど。でも、とにかくこれからは全額負担しなくちゃいけなくなるんだろ?かなり厳しい事に変わりはないよな」

「ですよね…。でも、すごく便利な場所で、しかも会社まで乗り換えなしで来られますから。今さらあんな好条件の住み処を手離したくなくて」


しかし貴志さんは引っ越しはしたくない、と。

そりゃそうだよね。

山手線沿線で駅まで徒歩7分で会社まで乗り換えなしだなんて。


……すっごくすっごく、魅力的だよね。

しかも相棒の方はそんな所に今まで5万5千円で住んでいたなんて…。

考えを巡らせているうちに、私の脈拍数はどんどん加速していった。


「それに引っ越しにも金がかかりますからね。だから何とか新しい同居人を探す方向で考えてるんですよ。今、知り合いの何人かに打診してて…」

「んー、でもなぁ。そんな簡単に見つかるかね?」


青柳さんは腕を組みつつ唸った。
< 18 / 277 >

この作品をシェア

pagetop