夢を忘れた眠り姫
「それこそ転勤でもない限り、皆そうやすやすとは今自分が住んでいる場所からは動きたくないんじゃないか?最初に部屋探しをした際、そこがベストだと思って契約したんだろうし」
「はい…」
「それに引っ越しって金がかかるだけじゃなくて、当日はさることながら事前準備と事後処理も必要で、それらがとんでもなく面倒で煩雑だし。『じゃあ俺がそこに住むわ』なんて、気軽に決断できる事じゃないよな」
「ですよね…」
ため息混じりにそう呟いたあと、貴志さんはふと左腕を上げて時計に視線を走らせた。
「あ。ひとまず俺、歯を磨いて来ちゃいますね」
「おお。そっか。もうそんな時間か」
その言葉を合図に貴志さんは机の上を手早く片付け始め、一方青柳さんは改めて目の前の端末に向き合った。
すぐに貴志さんはお弁当の空容器が詰まったビニール袋を手に席を立つ。
一瞬迷ったけれど……。
私も勢い良く立ち上がり、こっそり小走りに、廊下を進む貴志さんの後を追った。
「き、きしさん!」
「え?わっ」
給湯室のゴミ箱に袋を投下し、踵を返して部屋を出ようとした彼の前に素早く立ち塞がる。
「す、すみません!先ほどの会話が聞こえて来てしまったのですが…」
言葉を発しつつ更に貴志さんに接近した私は思わずドキリとした。
「はい…」
「それに引っ越しって金がかかるだけじゃなくて、当日はさることながら事前準備と事後処理も必要で、それらがとんでもなく面倒で煩雑だし。『じゃあ俺がそこに住むわ』なんて、気軽に決断できる事じゃないよな」
「ですよね…」
ため息混じりにそう呟いたあと、貴志さんはふと左腕を上げて時計に視線を走らせた。
「あ。ひとまず俺、歯を磨いて来ちゃいますね」
「おお。そっか。もうそんな時間か」
その言葉を合図に貴志さんは机の上を手早く片付け始め、一方青柳さんは改めて目の前の端末に向き合った。
すぐに貴志さんはお弁当の空容器が詰まったビニール袋を手に席を立つ。
一瞬迷ったけれど……。
私も勢い良く立ち上がり、こっそり小走りに、廊下を進む貴志さんの後を追った。
「き、きしさん!」
「え?わっ」
給湯室のゴミ箱に袋を投下し、踵を返して部屋を出ようとした彼の前に素早く立ち塞がる。
「す、すみません!先ほどの会話が聞こえて来てしまったのですが…」
言葉を発しつつ更に貴志さんに接近した私は思わずドキリとした。