夢を忘れた眠り姫
「ま、俺の方は別に身分を明かしても構わないし、あんたの秘密をこの場で暴露してしまっても良いんだけど…」「やめてっ」


思わず語気を荒げて発言を遮った。


「勝手に情報を拡散しないで。私を差し置いて彼に事実を告げないで」


だけどすぐに息が苦しくなり、最後の方は掠れた声になってしまった。

私のリアクションに満足そうにほくそ笑むと、探偵はブルゾンの胸ポケットを探り紙片を取り出した。


「これ、俺の連絡先だから」


差し出されたそれを見て、名刺である事に気付く。


「二人水入らずで、今後のことをじっくり相談しようじゃないか。といっても、あんたの方は色々と準備が必要だろうから、多少は猶予期間をやるよ」


不本意ながらもそれを受け取った所で、探偵は私の耳元に唇を寄せ、コソッと囁いた。


「だけど、できるだけ早く連絡くれよな。じゃないと俺、待ちきれずに第三者に情報を売っちゃうかもしれないよ?それでも充分な稼ぎになるだろうし」

「おい」

「じゃ、そういう事だから」


不穏な空気を感じたらしい貴志さんが私達の間に割って入ろうとしたけれど、それよりも早く探偵は退いた。


「あ、その人への言い訳は自分で考えな。俺にそこまでフォローする義務はないし。それじゃあまたね」


そして言葉の途中で歩き出し、手をヒラヒラと振りつつ去って行った。
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