夢を忘れた眠り姫
「プライベートを伏せたい人物って……かなりの大物ってことか?」

「お話できるのはここまでです」


私はそこで唐突に解説を切り上げた。

シャットアウト感が半端ないけど、あまり詳細を語る訳にはいかない。

ベンさんにも止められているし、それより何より私自身がもうこれ以上口にしたくない事だから。

あの人とのいざこざの内容など。


「……そう」


貴志さんはそう呟き、目の前のカップを手に取り、コーヒーを一口啜った。


「……ん?」


しかしそれを飲み下した所で、突然、何かを思い出したように怪訝そうな声を発する。


「ちょっと待った」

「え?」

「確か以前その話を聞いた際、『専門家に介入を頼んだ』とか言ってなかったか?」

「はい」
「それは一体どこの誰?ここまでの話に出て来なかったよな?」

「あ、いえ」


そういやその説明をしようとした所で話がそれてしまったんだっけ、と今更ながら気が付く。

だから貴志さんはまだ最も重要なデータを取得していない。

なので私は急いで言葉を繋いだ。


「すでに出て来ていますよ。その専門家っていうのがズバリ…」ピンポーン。


するとそこで、エントランスからと思われる呼び鈴の音が室内に響き渡った。


「あ」

「来たみたいだな」


言いながら貴志さんは素早く立ち上がり、ドア付近に設置してあるインターホンへと近付く。
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