夢を忘れた眠り姫
一瞬しんみりしかけたけど、サイドメニューのポテトを次々口の中に詰め、「一度に何本まで入るか」実験を始めた彼を見て『いや、そりゃないな』とすぐさま思い直す。

ただただ彼は自分が楽しみたかっただけだろう。


「へぇー。そんなあからさまな言い方をして来たんだ、その探偵」


私の話が一段落し、口内の芋をすべて飲み込んだ所でベンさんは言葉を発した。


「バカな奴だな。まぁ、おかげであっけなくカタがつきそうだけど」

「……本当ですか?」

「うん。とにかく、そいつをどこかに呼び出してくれよ」


芋に水分を持って行かれて喉がカラカラなのか、ベンさんはコーヒーをゴクゴクと飲んでから続ける。


「できれば密談に最適な、隠れ家的な雰囲気の飲食店が良いかな。気が弛んであれこれ口走ってくれそうだし。最初はゆめちゃんとそいつで会話をしてもらって、頃合いを見計らって近くの席でスタンバイしていた俺が出て行く、と」

「分かりました」


すでに私の脳内には相応しいロケーションが浮かんでいた。

元々は貴志さんから教えてもらった、会社近くにある喫茶店『アルルカン』。

尾行していたのだから探偵は当然、私の勤務先は把握しているだろうし、喫茶店の場所も簡単な説明ですぐに分かるだろう。

そもそも「何かを探し当てる」事に関してはプロなのだから、その点私が心配してやる必要はない。
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