夢を忘れた眠り姫
「待ち合わせ時間は11時15分にしとくか。急なアポだけど、あっちはゆめちゃんから連絡が来るのを手ぐすね引いて待ってるだろうから、二つ返事でOKするハズだ」

「あの…」


するとそこで貴志さんが遠慮がちに会話に入って来た。


「俺もその決戦の場にご一緒しても良いですか?」

「え?」

「人数が多い方が相手に精神的プレッシャーをかけられると思いますし、さっきは訳が分からないうちに逃げられてしまったから、一言何か言ってやらないと気が済まなくて…」「いや。申し訳ないですけど、貴志さんはマンションで待機していて下さい」


ベンさんはきっぱりとその申し出を断った。


「もしくは全然関係のない場所に出かけてくれても構いませんけど、とにかく話し合いへの参加は認められません」


それまでの飄々としたトーンではなく、ビジネスモードに切り替わったな、という事が如実に分かる、重厚で威圧感のある声だった。

ベンさんて、時々こんな風にスイッチが入るんだよね。

その様子を目の当たりにする度に、やはり彼は私より10以上年上の大人の男性で、そして「言葉」を武器に戦うその道のプロなのだという事を再認識する。


「え?ですけど…」


戸惑いながらも貴志さんは食い下がった。


「事の発端はうちの母親がそいつを雇ったからで、俺も全く無関係という訳ではないですし…」
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