夢を忘れた眠り姫
「ふ~ん。俺の方は別に良いよ。じゃ、さっそく本題に入ろうか」


テーブル端にあった容器を引き寄せ、砂糖をスプーン3杯、ミニカップに入ったミルクをすべてコーヒーに投入しながら、探偵はヘラヘラとした口調で返答した。


「では…。あなたの具体的な要求は何でしょうか?」


しっかりと彼の目を見据えながら質問する。


「私は一体何をどうすれば良いのでしょう?」

「まーたまたぁ。言わなくても分かってるでしょー?」


ズズズ、と下品な音を立ててコーヒーを啜ったあと、探偵は続けた。


「それなりの誠意を見せてくれれば、今回の件は口をつぐんでおいてやるよ。母親には当たり障りのない事だけを報告して終わりにする。当初の予定通り『予算的にこれ以上の調査は難しい』って言えば、大人しく引き下がるだろうし」

「……その申し出をお断りしたら、どうなさるおつもりなんですか?」

「そりゃー、常に有名人、著名人のスキャンダルネタを探している、ゴシップ記事専門の出版社に話を持って行くに決まってんだろ?」


そこで探偵は、例のニヤニヤとした笑いを浮かべた。


「あの世界のドンで、私生活は謎に包まれているじいさんの、超プライベートな情報。しかもそれがまるで作り物みたいにドラマチックな内容なんだもんなー」


相変わらず生理的嫌悪感をこれでもかとばかりに煽る表情である。
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