夢を忘れた眠り姫
「お涙頂戴風に仕上げるもヨシ、視点を変えて、あのじいさんの傍若無人ぶりをクローズアップするもヨシ、どうとでも料理できるし長いこと引っ張れそうだもんな。さぞかし高値で買い取ってくれるだろうよ。上手く行けばそのまま俺が調査の続行を頼まれるかもしれないし」


薔薇色の未来図を思い描いているらしい探偵は、夢見るような表情で語り続ける。


「だから俺は別にどっちでも良いんだけどね。ただ、やっぱりまずはあんたから先に接触しておこうかな、と思って」

「何度でも『誠意』を受け取れるかもしれないですもんね」

「……は?」

「出版社とのやり取りは一回で終わる可能性大だけど、弱味を握っている相手からなら、なんやかんやとゆさぶりをかけて数回に渡って望みの物を手に入れられるかもしれないし。どうせ最初からそのつもりなんでしょ?」

「……分かってんだったら話は早いや」


囁きながら探偵はズイっと身を乗り出して来た。

反射的に思わず上体を引きながらも、私は頑張って話を進める。


「だけど私に、あなたの期待に答えられるような力があるように見えますか?」

「いやいや、それについては大丈夫だろ?前にも言ったけど、あのじいさんなら金はうなるほど持ってるだろうし」


私は無言のまま探偵の言葉の続きを待った。
< 209 / 277 >

この作品をシェア

pagetop