夢を忘れた眠り姫
「可愛い可愛い孫娘のあんたに泣きつかれたら無下には断れないだろう。俺の希望通りの額で情報を買い取ってもらえるハズ。だから早いとこ連絡を取って…」「はい、アウトー!」


するとそこでベンさんが勢いよく立ち上がった。


「うわっ」


背後からの突然の声に、探偵はビクッと飛び上がる。


「あなた今、彼女に対して金銭の要求をされていましたよね?私の記憶にも記録にも、バッチリ残りましたよ」

「な、な、何だよお前!」

「あー、やっぱり。まだ俺の存在までは掴めていなかったんですね」


体を捻って自分を仰ぎ見ながら、あたふたと言葉を発する探偵に、余裕の笑みを向けながらベンさんはたたみかけた。


「ダメだな~。いくら儲かってなくても、一応探偵事務所の看板を掲げてるんだから。相手の素性はじっくりしっかりとことん調べ上げてから行動を起こさなきゃ」


話をしながらベンさんは素早く移動し、私の右隣にサッと腰かける。


「調査の初っぱな、偶然掴んだネタに有頂天になって、他の事はそっちのけになっちゃったんだね。そんなんだから本業で大成できないんだよ?」

「お、お前一体…」

「あ、私こういう者です」


そこでベンさんはスーツの内ポケットから、予め一枚忍ばせておいたらしい名刺を取り出すと探偵の席の前に置いた。


「しがない法律事務所を営んでおります、弁護士の内藤勉と申します」

「べ、べんごし!?」
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