夢を忘れた眠り姫
これからの私の人生がかかっているのだから。

私は気合いを入れ直し、改めて彼に向けて言葉を発した。


「き、貴志さんは今、るーむしぇありんぐの相手を探しているのですよね?」

「え?あ、ああ…」

「だったらぜひともそこに、私を住まわせてはもらえませぬか!?」

「へっ!」


興奮のあまり時代劇チックになった私の懇願に、貴志さんは鳩がビーンズガンをくらったような表情になった。


「もちろん狭い方の、次々5万5千円のお部屋に!あ、そんなに長きに渡って居座るつもりはありませんから。ある程度貯金が貯まったら速やかに出て行く所存で…」

「ち、ちょっと落ち着いて」


貴志さんは自分自身にも言い聞かせるように私をそう諌めた後、一瞬思案し、唐突に歩き出した。


「こっち来て」

「え?」

「ここじゃあ、いつ誰が入って来るか分からないから。移動しよう」

「あ、はい」


その促しに従い、貴志さんの後に続いて廊下に出る。

しかし移動距離はさほどでもなかった。

たどり着いたのは給湯室の壁を挟んで横手に位置する、緊急避難用の窓が突端の壁に設置されている通路だった。

メインの廊下から見た時に、突き当たりに給湯室があり、その直前の角を右に曲がって数歩進み、掃除道具等納める為の小部屋を正面に見ながら今度は左に折れてようやくそのスペースまでたどり着ける。
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