夢を忘れた眠り姫
「あ、ちなみに、その字を見てもらえれば分かると思いますけど、俺のこと音読みで『ベン』って呼ぶ人の方が多いです。昔はそのあだ名をつけられそうになる度に頑なに拒否してたんだけど、この職業についてからは、まるで生まれた時からそうなるのを暗示されてたみたいに思えてすっかりお気に入りになったので解禁いたしました。って、それはさておき」


唖然呆然としている探偵には構わず、ベンさんはマイペースに話を展開して行く。


「今回彼女より相談を受け、この場に馳せ参じました。予想通り、案の定、恐喝の現場を抑えちゃいましたので、しかるべき機関に報告させていただきます。「まだ金を受け取ってないからセーフ」という訳にはいかないから。『恐喝未遂』として刑罰の対象になるんだな、これが」

「な、な…」

「でもまぁ、他に犯罪歴がなければ執行猶予がつくだろうから安心しなよ。あ。やけくそになって、ゆめちゃんの秘密をネットで拡散、なんてバカな真似はするなよ?」


いつの間にやらベンさんの口調はとってもフレンドリーなものになっていた。

それに対して相手が親しみを覚えるかどうかは別として。


「そうしたらこっちは、法の名の元に、正々堂々、徹底的に応戦する構えだ。『事件』になれば『記録』が残る。必然的にあんたのプロフィールもネットの住民に嗅ぎ付けられてしまうんじゃないか?」


すると探偵の体は小刻みに震え出した。
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