夢を忘れた眠り姫
かなり集中していたようで、ベンさんと私の声に少し遅れて反応する。


「お疲れ様でした。ここ、どうぞ」


次いで、急いでパソコンを閉じ立ち上がると、貴志さんはベンさんにソファーを明け渡した。


「あ、どうも。それじゃあ失礼して…」

「どうでしたか?話し合いの方は」

「ゆめちゃんの活躍で、狙い通り示談でカタをつける事になった。いやー、絵に描いたような小物っぷりだったよ、あの探偵」


ベンさんはソファーに、貴志さんはそこから見て右手側のラグの上に腰を落としながら会話している。

私は荷物をソファーの裏に置いてからキッチンへと向かった。

お茶の準備をする為だ。

コーヒーはすでに2杯飲んで来たので緑茶を淹れる事にした。


「か弱い女性には強く出られても、ちょっとでも自分には太刀打ちできそうにない権力が絡み始めると途端に怖じ気づいちまって。きっと示談書にも速攻でサインするだろう」

「そうですか。じゃあ、その件はもうほぼ解決ですね」

「うん。で、貴志さんのおっかさんへの対応もちゃんと考えてるから、安心してな」

「お願いします」


軽く頭を下げ、一拍置いてから貴志さんは続けた。


「しかし……、何だかいまだに信じられないな」

「ん?」

「あなたが弁護士だったというのが」

「フフフ。色んな人からもう100万回くらい言われてるけど、いつ聞いても気持ちいいなー」
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