夢を忘れた眠り姫
「なるほど。確かに」

「ま、そんな訳で、俺は確固たる信念を持ってチャラ男感を前面に押し出している訳よ」


私がお茶とお煎餅をトレイに乗せてリビングに運び込んだ時には、その話は終焉を迎えていた。


「失礼します」

「お、サンキュー」

「ごめん。疲れてるだろうに、永井さんにやらせちゃって」

「いえいえ全然。車移動だから楽チンだったし、精神状態はむしろ朝より良好ですから」


貴志さんの声に笑顔で答えながら私は彼の対面、ベンさんの左手の位置に腰を落とした。


「ところで…」


皆で一斉にお茶を啜り、一息ついた所で、貴志さんが徐に切り出す。


「今回の件で、永井さんは更にベンさんに支払う料金が増えてしまった訳だよな」

「え?」

「いくら知り合いとはいえ、弁護士が無償でトラブルの仲裁をする訳にはいかないだろうし。あの女が余計な事をしたせいで…。本当に申し訳ないと思う」


貴志さんは沈痛な面持ちで続けた。


「そこで提案なんだけど、その分を俺が負担するっていうのはどうだろう?」

「え?いや、そういう訳には…」

「探偵に示談金を支払わせるから大丈夫だよ」


お煎餅の袋を手に取り、ガサガサと開きながらベンさんが言葉を挟む。


「それと、『あんたのせいで弁護士に相談することになったんだから、その費用を出してね』っていう風にするから。ゆめちゃんは抵抗があるみたいだけど」
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