夢を忘れた眠り姫
そしてすっくと立ち上がる。
「すみません。俺、部屋に引き揚げますね」
貴志さんはベンさんに向けてそう宣言した。
「ちょっと休んで来ます。今日はとても疲れました…」
「ああ。ゆっくり過ごしな。俺はそろそろおいとまするからさ」
「はい、それでは」
彼は明らかに私とは視線がかち合わないように意識しながらパソコンを持ち上げ、体の向きを変えて歩き出し、リビングを出て行った。
「わ、私、なんてことを…」
今さらながら体に震えが走る。
自分にだって、どうしても許す事のできない、大嫌いな血縁者がいるくせに。
その人と似ているなんて言われたら、血の繋がりを強調されたら、悲しいし悔しいし苦しいに決まっているのに。
それなのに私は彼に対してそんな仕打ちをしてしまった。
越えてはいけない境界線を越えて、貴志さんを傷付け、奈落の底に突き落としてしまった。
「今のはちょっとフォローが難しかったな」
ベンさんが穏やかに語り始める。
「貴志さんの詳しい生い立ち、歴史は俺には分からないし、本人が告白しない限り追求するつもりもないけど、ゆめちゃんが彼にとっての地雷を踏んじまったってのは充分に察知できた」
「そう、ですよね…」
体同様震える声で同意した私をじっと見つめながらベンさんは続ける。
「だけど、人は間違う生き物だから」
とても慈悲深い眼差し、声音だった。
「すみません。俺、部屋に引き揚げますね」
貴志さんはベンさんに向けてそう宣言した。
「ちょっと休んで来ます。今日はとても疲れました…」
「ああ。ゆっくり過ごしな。俺はそろそろおいとまするからさ」
「はい、それでは」
彼は明らかに私とは視線がかち合わないように意識しながらパソコンを持ち上げ、体の向きを変えて歩き出し、リビングを出て行った。
「わ、私、なんてことを…」
今さらながら体に震えが走る。
自分にだって、どうしても許す事のできない、大嫌いな血縁者がいるくせに。
その人と似ているなんて言われたら、血の繋がりを強調されたら、悲しいし悔しいし苦しいに決まっているのに。
それなのに私は彼に対してそんな仕打ちをしてしまった。
越えてはいけない境界線を越えて、貴志さんを傷付け、奈落の底に突き落としてしまった。
「今のはちょっとフォローが難しかったな」
ベンさんが穏やかに語り始める。
「貴志さんの詳しい生い立ち、歴史は俺には分からないし、本人が告白しない限り追求するつもりもないけど、ゆめちゃんが彼にとっての地雷を踏んじまったってのは充分に察知できた」
「そう、ですよね…」
体同様震える声で同意した私をじっと見つめながらベンさんは続ける。
「だけど、人は間違う生き物だから」
とても慈悲深い眼差し、声音だった。