夢を忘れた眠り姫
「だからこの世には『ごめんなさい』って言葉が存在するんだ」


それによって私は若干落ち着きを取り戻し、ひとまず体の震えだけは終息した。


「もちろん、それを受け入れるかどうかは、あくまでも傷つけられた側が判断することだけどな。とにかくこの件に関しては俺は口を出さないでおく。ゆめちゃん自身が頑張って、ちゃんと貴志さんに『ごめんなさい』を伝えな」

「はい…」

「さて。じゃ、今日はもう帰るとするか」


言いながらベンさんは立ち上がった。

気もそぞろだったけれど、私もつられて立ち上がり、身仕度を整えてから歩き出した彼の後を付いて行く。


「じゃ、また後日連絡するから」

「はい…。今日はありがとうございました」


玄関先で彼を見送ったあと、私は再びリビングに戻り、ソファーに腰かけ、そのままじっとそこで過ごした。

貴志さんが姿を現すのを待ったのだ。

しかし、だいぶ日が傾き、夕飯を食してその後片付けが終わったあとも、彼が動き出す気配は一向に感じられなかった。

言わずもがなではあったけれど、バリバリ避けられてしまっているのだという事を実感する。

そしてハタと気が付いた。

私がここに居座り続けたら、貴志さんはいつまで経っても食事を摂ることができないではないか。

私は慌てて自室へと向かった。
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