夢を忘れた眠り姫
会社を出て電車に乗り、マンション最寄りの駅に着いたあと、何となくそのまま真っ直ぐ帰る気にはなれなくて、途中、例のスーパーに寄り道した。

作りおき用の食材ではなく、個人的に食べたり飲んだりするお菓子やお茶等を仕入れておこうと思ったのだ。

普段買っている大袋入りのお徳用お茶菓子類の他に、もうちょっとグレードアップしたスイーツも。

何だかガッツリ、甘いものを食べたい気分で…。

こういう時くらいは素直に自分を甘やかす事にしている。

店内をゆっくり見て回り、お馴染みの商品をキープしてからお高めスイーツが保冷状態で陳列されているエリアに向かう。

かなり迷ってから、小さいホール型の、生クリームとフルーツが添えられているベイクドチーズケーキを選び、カゴに入れてレジへと向かった。

精算後、店を出て今度こそマンションを目指す。

建物敷地内に入り、バッグから鍵を取り出しつつ玄関へと歩を進めていた私は、自動ドア付近に誰かが佇んでいることに気が付いた。

ガラス戸を開け、その人物の正体が分かった瞬間鼓動がはねあがる。


「あ。まったく、やっと帰って来たわねっ」


そこで待ち伏せしていたのは貴志さんのお母さんだった。

私の姿を認識した途端、憎々しげに声を発する。


「な、何かご用でしょうか?」

「あの子は一緒じゃないの?」

「き……真守さんはお忙しいので、先に帰って来ました」
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