夢を忘れた眠り姫
母親は勝ち誇ったように声を発したけれど、私は相手をせずに続けた。
「親が亡くなり、せっかく遺してくれたお金も諸々の支払いで結構な額相殺され、贅沢などしていなくても日々の暮らしの中でどんどん残り少なくなっていき、バイトをしても稼げる賃金はたかが知れていて、『今月はこの金額でやりくりしなくちゃ。どうかイレギュラーな出費などありませんように』と祈りながら過ごし、袋から一粒でもあますことなく必死にお米をかき集め、生活を切り詰めて切り詰めて、どうにかこうにか大学を卒業して無事に就職して、初めてお給料が振り込まれた際に、思わず通帳を胸にかき抱き『何とか命が繋がった。ありがとう』と、涙を滲ませながら天を仰いだ私からしたら、お金は正真正銘生きていく為の武器であり宝物です」
おそらく鬼気迫る表情で語る私を見て、母親は圧倒されたように黙りこんだ。
「だからお金は絶対にあった方が良いに決まっています。健康な限り働いて、充分に貯え、大切に使って行くべきものです。でも…」
私は一旦言葉を切ってから続ける。
「だからといって、お金だけがあればいいという訳でもないんです」
あまりにも当たり前過ぎる事を、まるで世紀の大発見であるかのように。
「お金の尊さを分かってくれている事が大前提で、なおかつ自分が心から好きになった人じゃないと、一生添い遂げることなんてできません。だから…」
「親が亡くなり、せっかく遺してくれたお金も諸々の支払いで結構な額相殺され、贅沢などしていなくても日々の暮らしの中でどんどん残り少なくなっていき、バイトをしても稼げる賃金はたかが知れていて、『今月はこの金額でやりくりしなくちゃ。どうかイレギュラーな出費などありませんように』と祈りながら過ごし、袋から一粒でもあますことなく必死にお米をかき集め、生活を切り詰めて切り詰めて、どうにかこうにか大学を卒業して無事に就職して、初めてお給料が振り込まれた際に、思わず通帳を胸にかき抱き『何とか命が繋がった。ありがとう』と、涙を滲ませながら天を仰いだ私からしたら、お金は正真正銘生きていく為の武器であり宝物です」
おそらく鬼気迫る表情で語る私を見て、母親は圧倒されたように黙りこんだ。
「だからお金は絶対にあった方が良いに決まっています。健康な限り働いて、充分に貯え、大切に使って行くべきものです。でも…」
私は一旦言葉を切ってから続ける。
「だからといって、お金だけがあればいいという訳でもないんです」
あまりにも当たり前過ぎる事を、まるで世紀の大発見であるかのように。
「お金の尊さを分かってくれている事が大前提で、なおかつ自分が心から好きになった人じゃないと、一生添い遂げることなんてできません。だから…」