夢を忘れた眠り姫
「……つまり、やっぱり俺は無意識に君を非難してしまっていたということなんだな」

「や。だって、それは自業自得ですし」


一ミクロンも悪くないのになかなか自分を責める事をやめようとしない貴志さんに、どう言えば伝わるのか、もどかしく思いながらも私は必死に主張する。


「そもそも、批評家以外が作品を評価してはいけない決まりなんてありません。むしろ、小説を読むのは圧倒的に一般の方の方が多いハズですから。作家自らが「私の作品見て見て!」と公開しているんですから、誰でも自由に閲覧して良いし、率直な感想を言って良いんです。そして作品を発表する側は、自分にとって気持ちの良い意見ばかりを期待していてはいけないと思います。時には辛口な感想が寄せられる事もあるでしょう。だけどそれをしかと受け止めなくちゃいけないんです。それが嫌なら不特定多数の人が訪れる場所で作品を公開なんかするべきではありません。とにかく私には物書きとしての覚悟というものが足りなかった」

「だけど俺も思いやりに欠けていたよな…」

「そんなことないです。悪いのは私です。私こそ、貴志さんへの配慮がまったく足りていませんでした」


「……何だか、キリがないな」


ほんのわずかな間沈黙したあと、貴志さんは首の後ろを撫でつつ、困ったような顔でそう呟いた。

しばしその動作を繰り返していたけれど、突如姿勢を正し、意を決したように宣言する。
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