夢を忘れた眠り姫
とても回りくどいかもしれないけれど、この話はここからスタートしたかった。
「……そんな幼少期を過ごした彼は、せめて将来は安定した暮らしを送りたいと願い、堅実な仕事に就けるよう、一生懸命勉強しました。といっても施設で年下の子達の面倒を見なくてはいけないので、塾に行く暇、お金などは当然なく、学校の授業を真面目に聞き、皆が寝静まってから教科書を使って復習するくらいでしたが。それでも都内にある某大学の商学部に進学する事ができました。学費はいわずもがなで奨学金です。目指したのは税理士。それなら一生食いっぱぐれる心配はないと考えたからです。努力の結果、必要な資格を取得し、卒業と同時にやはり都内にある大手の会計事務所に就職する事ができました」
「そこに行き着くまでには、かなりの努力を必要としただろうな…」
「ええ。でも父は、『結果良ければすべて良し』と考え、希望に胸を膨らませながら社会人生活をスタートさせました。奨学金という名のローンを抱えてはいましたが、そこのお給料なら毎月無理なく返して行ける額でした。入社して最初の数ヶ月は、先輩方と共に、自分が引き継ぐ予定のクライアント先を訪問する毎日でした。たいていは自営業の商店、工場などですが、フリーの歌手、イラストレーター等の個人で活動する職業の方々の税務相談にも乗っていて、定期的に帳簿チェックを行っていました。その中に、ある小説家がいたのです」
「……そんな幼少期を過ごした彼は、せめて将来は安定した暮らしを送りたいと願い、堅実な仕事に就けるよう、一生懸命勉強しました。といっても施設で年下の子達の面倒を見なくてはいけないので、塾に行く暇、お金などは当然なく、学校の授業を真面目に聞き、皆が寝静まってから教科書を使って復習するくらいでしたが。それでも都内にある某大学の商学部に進学する事ができました。学費はいわずもがなで奨学金です。目指したのは税理士。それなら一生食いっぱぐれる心配はないと考えたからです。努力の結果、必要な資格を取得し、卒業と同時にやはり都内にある大手の会計事務所に就職する事ができました」
「そこに行き着くまでには、かなりの努力を必要としただろうな…」
「ええ。でも父は、『結果良ければすべて良し』と考え、希望に胸を膨らませながら社会人生活をスタートさせました。奨学金という名のローンを抱えてはいましたが、そこのお給料なら毎月無理なく返して行ける額でした。入社して最初の数ヶ月は、先輩方と共に、自分が引き継ぐ予定のクライアント先を訪問する毎日でした。たいていは自営業の商店、工場などですが、フリーの歌手、イラストレーター等の個人で活動する職業の方々の税務相談にも乗っていて、定期的に帳簿チェックを行っていました。その中に、ある小説家がいたのです」