夢を忘れた眠り姫
貴志さんは驚愕の表情を浮かべていたけれど、私はそのまま言葉を繋いだ。


「最初のうちはあちらも猫を被っていたようで、比較的穏やかなムードの中近況報告しあっていたのですが、面会を重ねる毎にだんだんとその本質が見えて来るようになりました。すこぶる居丈高で高圧的で断定的な物言いに、会う度にストレスが蓄積して行き、彼から『○日にまた来なさい』と命令されても『就職したばかりで忙しい』『今度の週末は休日出勤する事になったから行けない』などと何やかんやと理由をつけて断るようになったのです。ただ、相手は病み上がりのお年寄りですし、その考えが頭にあって、完全には拒絶できずに月に3、4回のペースで渋々会いに行っていたのですけど。だけどそんなある日、彼は決して許すことのできない一言を口にしたのです」


『娘は結局、あの男に殺されたんだ』


「どういう流れで、何がきっかけでそのような話になったのかはもう忘れてしまいましたけど、それを聞いた瞬間目の前が真っ暗になりました」


『あんな男と結婚していなければ事故に遭うことはなかったし、親より先に死ぬことなどなかっただろう』


「あまりの怒りで体が震えました」


『だからお前には、私の力を駆使して最高の結婚相手を用意してやろう。私の言う事を大人しく聞いていれば間違いない』
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