夢を忘れた眠り姫
「主人公がまだ中高生で、後先考えずに行き当たりばったりで『ニセの恋人作戦』を思い付いたっていう流れなら面白いドタバタ学園ラブコメになりそうだけど、もういい年した社会人がその思考回路はないわー」


はぁ~、とため息をつき、頭を左右に振りながら私は続ける。


「まぁ、主人公と相手役を接近させるには手っ取り早くて都合が良いネタですけどね。でも、冷静に考えてみて下さい?まさか拉致されて監禁されて強引に籍を入れられる訳じゃあるまいし、実の親に恋人の有無をしつこく確認されたり見合いを勧められたりしてるだけなんだから「結婚相手は自分で見つける。もし見つからなくてもそういう運命なんだから諦めて欲しい」で話は終わるじゃないですか。それでもしつこく絡んで来るようならそれなりの対策を練れば良い。何でそこで『ニセの恋人』に行きつくかなぁ?人気のストーリーだからって安易にそれに乗っかっちゃダメですよ」

「ストーリー??」


さらに混乱している様子の貴志さんに気付きはしたけれど、そこでブレーキがかかる事はなかった。


「そもそも、他人に平気で偽物の「恋人」や「婚約者」を紹介できるヒーローやヒロインなんて全然清らかじゃないし憧れないし萌えない。だって、自己主張する勇気もなく、嘘をついて現実から逃げようとしているだけだもの」


下手したらズル賢さだけが際立って、読者をこの上なくイライラさせてしまうだろう。
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