夢を忘れた眠り姫
『それじゃあ…。不動産屋はうちのマンションの最寄り駅前にあるんだけど、午前11時に、○○駅の改札出てすぐの所で待ち合わせってのはどうかな?』

「改札、ですか?」

『うん。そこら辺に立っていてくれれば俺が見つけ出すから』

「分かりました。お願いします。それで、手続きっていうのは具体的には何を行うんでしょうか?」

『あくまでも借り主は俺で、何かあった場合の全責任は俺が負う事になっている。だから同居人が何かガッツリと契約を交わすという訳ではないんだ。ただ『貴志と一緒に住む者です』っていうのを報告して、あちらが用意した書類にサインをするだけで』

「何か持参しなくてはいけないものとかありますか?」

『たしか印鑑と、公的に身分を証明するもの…たとえば免許証やパスポートや保険証なんかだったかな?一応それだけは持ってきておいて』

「分かりました」


会話の途中で通勤用バッグを引き寄せ、中から手帳を取り出してスケジュールのページを開いていた私は、日曜日の日付の欄に付属のペンで「○○駅、11、改札、いんかん、ほけん証」と殴り書きした。

そして一瞬間を置いてから問いかける。


「…ちなみに、私はいつそちらに移り住んで良いのでしょうか?」

『ん?』

「引っ越し屋さんに連絡して近日中に見積り出してもらって、その金額で納得できたらその場でもう引っ越しの日時を決めてしまおうと思ってるんですが」
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