夢を忘れた眠り姫
夢さえ入り込む余地はなかった。

いや、それだけ深い睡眠状態だったということだから、体と精神にとってはむしろその方が良いのだろうけど。

しかし私はそのプログラムが見られないと、かなり損した気分になるのだった。


「…ま、仕方ないか」


自分を納得させつつ布団から出る。

朝食兼昼食を摂って洗濯機を回し、その間に部屋の掃除や風呂、トイレ掃除を済ませたあと、ちょいと一休みするべく飲み物と個包装のクッキー3つを手に、いそいそとコタツ前へ。

すると、腰かけてコーヒーを2、3口啜った所で天板の上のケータイが震えた。

「はい」

『私、あけぼの引っ越しセンター○○営業所の鈴木と申します』


応答すると、予想した通り引っ越し屋さんからの電話だった。


『こちら、永井様の携帯電話でよろしいでしょうか』

「はい、そうです」

『この度は当社にお見積もりのご依頼をいただきまして、誠にありがとうございます』


おそらくマニュアル通りと思われる挨拶と、必要事項の確認を経て、23日の午前10時に担当者にアパートに来てもらうという風に話はまとまった。


「ヨシヨシ。順調にコトは進んでいるな」


電話を切ってから、ホクホク気分で改めてコーヒータイムを楽しみ、その後は洗濯物を干したり買い物に行ったり作りおき用のおかずを作ったりして、普段通りの休日を過ごした。
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