夢を忘れた眠り姫
貴志さんの予想通りの展開である。

不動産屋さんを出たあと、今度は貴志さんのマンションにお邪魔し、内見させてもらう事になった。

建物の具体的な場所を把握するのはもちろんのこと、室内の全体的な間取り、そして私が入る予定の部屋の大きさ、構造を知っておきたかったからだ。

玄関入って左手にあるリビングダイニングキッチンの壁越しに廊下を進み、突き当たりで右に折れ、二つ並んでいるドアの奥側を開けて中に入った。


「ああ、これなら荷物は全部持って来られそうです」


前情報通り、さほど広くない室内をざっと見渡したあと、収納スペースを確認しながら返答する。

今の部屋の押し入れの半分くらいしかないクローゼットだったけれど、布団を収納しない事を考えれば容量はどっこいどっこいだろう。

そして家具類もすべて置けそうなのでひとまず安心した。


「エアコンはリビングにしか付いていないんだ」


窓辺に立ってそこからの外界の景色、そして日の光の入り具合等をチェックしていた私に貴志さんが解説した。


「全部の部屋に設置してしまうと電気代も恐ろしいことになるし。だから暖まりたい時、涼みたい時は遠慮せずリビングを使って。もちろん、自室に籠りたいっていうんだったらそれでも良いけど、必要な冷暖房器具は自分で用意してもらう事になる」

「あ、はい。大丈夫です」
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