夢を忘れた眠り姫
もちろん貴志さんのプライベートルームは覗いていない。

ここに住み始めたら私も、自分の部屋に彼を招き入れる事はしないと思うし。

そのままリビングでお茶をご馳走になりながら、今後共同生活をしていく上でのルールを話し合った。

「お互いの生活には極力干渉しないこと」というのを大前提に規約が定められ、あとは実際に暮らし始めてから何か不都合な点が出て来たら適宜修正しよう、という風に話はまとまった。


「それでは今日の所はこの辺でおいとまします」

「ああ。気を付けて帰って」


お別れの挨拶をし、私はマンションを後にした。

ちなみに通勤時と同じローヒールのパンプスで、ゆったりペースで歩を進め、駅まで7分弱で移動できた。

しかも歩道がしっかり整備されている大きな通りで、両脇に飲食店やコンビニが軒を並べ、多少遅い時間に通っても人通りは多そうだ。

ただ、商店街はマンションの数十メートル手前で途切れてしまうので、その付近だけはちょっと寂しい感じになりそうだけど。

まぁ早足でさっさと通過してしまえば大丈夫だろう。

距離的にいえば今の私の住まいよりは会社から遠ざかってしまうけど、どうせ電車で運ばれるのだからそこはさほど問題じゃない。

やっぱり住居から通勤に使える公共交通機関の乗り場までどれくらいの時間を要するか、そしてその界隈の治安の良し悪しが最重要事項なのであって、その点今回の物件は文句なしだった。
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