夢を忘れた眠り姫
「だけど永井さん、それでなくても細いのにそれ以上痩せたら風に吹き飛ばされちゃうんじゃないの?」

「私の贅肉五キロくらい分けてあげたいわー」

「私は十キロあげても全然余裕だねっ」


「アッハハハ!」と豪快な笑い声を上げる皆さんをシラケさせたりしないように私も「うふふ」なんて上品な笑いを挟んでから、長方形のサンドイッチの端っこにそっとかぶりついた。

本当はこれくらいのサイズなら二口で消滅させられるんだけどね。

しかも『食欲が湧かない云々』も真実とは真逆の虚偽の申告だった。

すみません、先輩方。

ホントは左斜め後方の男性社員が食しているカツ丼レベルならペロリとたいらげられるくらいの食欲はバリバリあるんスよ!

なんだったらミニうどんも追加でイケるんスよ!

だけど、家計を節約する上で、一番手っ取り早く調整できるのはやはり食費だから…。

私はいつもお昼はこのメニューで乗りきっていた。

社食と併設の売店で売られている80円の紙パック牛乳と、250円のハム玉子野菜のミックスサンド。

牛乳はもちろん、値段の割には具がてんこ盛りのサンドイッチは栄養バランスはバッチリだし自分の胃を最低限満足させられるボリュームであるということ、そして一番安く済む組み合わせということで、私にとってはゴールデンコンビなのだ。
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