夢を忘れた眠り姫
「あ。でも、結果的に親は学費と就職するまで食い繋げるくらいのお金は遺してくれましたからね。それだけは不幸中の幸いでした。それがなかったら一体どうなっていたことか」

「でも、金があるから良いってもんでもないし…」
「あ。すみません。何だか微妙な空気にしてしまって」


とても神妙な貴志さんの表情を見て、今さらながらに自分の言動を反省し、慌てて謝罪した。


「別に私は大丈夫ですから。両親との楽しく幸せな記憶はたくさん残っていて、それらを思い出せばいつでも心が上向きになれます。それに、時々は会う事もできるし」

「え?」

「夜、夢の中で」


だから私にとっての睡眠は、本当に、とってもとっても大切なものなのだ。

ここ最近は眠れなかったり、反対に眠りが深すぎてなかなか夢の世界にはたどり着けずに、会えない日々が続いているけれど。

すべてが片付いた時、また三人でゆっくりと、語り合える日が来るだろう。


「というワケですみませんが、これ、よろしくお願いします」

「…ああ」


貴志さんは丁寧に箱の梱包を解き、フタを開けると、まずは滑り止めのシートを取り出してチェストの天板に敷き、その上にしっかりと仏壇をセットしてくれた。


「ありがとうございます。後は自分でやりますから」

「…分かった」


貴志さんは短くそう返答すると、そのまま部屋から出て行った。
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