夢を忘れた眠り姫
やっぱ良いな、あの人。

仏具や写真を並べつつ考える。

この話になると、あれこれしつこく詮索して来る人もいるけれど、そういう気配は見せなかったし。

思った通り、他人との間に適度な高さの壁を作り、ほどほどにドライに振る舞ってくれる、とても付き合いやすい人であった。

これなら共同生活は上手くやっていけそうだ。

そんな快適な環境を提供してくれる彼への恩返しとして、私も例のミッションをきちんと遂行しなければな。

名付けて『偽りの婚約者作戦』。

実はさっそく明日、彼の母親とのファーストコンタクトが控えているのであった。

私が慌ただしい日々を過ごしている間に、貴志さんの方は母親からの電話攻撃に応戦していたらしい。

『見合いをしなさい』
「嫌だ」
『どうして』
「嫌なものは嫌なんだ」というやり取りを経て、「実は結婚を前提に付き合っている人がいる」という風に話を持って行ったようだ。

しかもこれからその相手と同棲するつもりでいる事を。

当然、母親は怒り心頭。

『いつの間にそんなことに!?』
『なに勝手な事をしているんだっ』
『とにかくその女に会わせろ!!』
と捲し立て、強引に面会の日取りを決めてしまったらしい。

まぁ、それは想定内というか、私にも事前に了承を得た上で、貴志さんはあえて母親がそう言い出すように仕向けたんだけど。

お見合いはまだ打診の段階で、本決まりではないらしい。
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