夢を忘れた眠り姫
お互いオフィスでは見せた事のない、初の私服姿をお披露目した訳である。

一応私の方は、20代女子の動きやすい服装としては可もなく不可もなく、とても無難なものだと自負している。

しかし貴志さんは…。

洋服の色やシルエットがどうにもこうにもレトロな感じで、『お洒落に無関心なお父さんの休日の装い』感が否めない。

せっかくスタイルが良いんだから、もっとコーディネートを楽しめば良いのにな、と思う。


「これでもう終わり?」

「はい」


なんて、大きなお世話にもほどがある感想はもちろん口にせず貴志さんの質問に答えた。

お風呂、洗面所グッズを貴志さんに見られるのはちょいと恥ずかしいので、普段は自分の部屋に置いておいて、使う毎にその場所に持って行く事にしたので今の段階で整理する必要はない。


「じゃあ永井さんもちょっと一息入れたら?これは俺が集積場に持って行くから」


言いながら、貴志さんはヒモの端を掴んでダンボールを持ち上げた。


「このマンション、24時間いつでもゴミ出しできるから」

「あ、そんな。自分で捨てに行きますよ?」

「いいっていいって。ずっと動きっぱなしなんだから、ここらで一休みしなよ」


会話しながら、貴志さんはさっさとスニーカーに足を入れつつたたきに降り立った。


「明日は俺の茶番劇に付き合ってもらわなくちゃいけないんだから。体力と気力を温存しておいてもらわないと」
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