夢を忘れた眠り姫
「肝心の物を渡しておかないと」


言いながらリビングに移動し、チェストの一番上の引き出しを開け、何かを取り出す。

「はい、これ。不動産屋から支給された、二個あるうちの一個。くれぐれも無くさないように気を付けて」


私に接近し、そう解説しながら彼が差し出して来たのはこの部屋の鍵だった。


「はい、分かりました。お預かりします」


それをしかと受け取り、改めてスーパーを目指す。


「約15分か…」


無事目的地に着いた所で、腕時計にチラリと視線を走らせ呟いた。

もちろん出発時にもきちんと時刻を確認しており、そこから算出した数字だ。

車だとあっという間だったけど、やはり歩くとなるとそれなりに時間がかかる。

幸せ荘に住んでいた時は歩いて数分の所に食料品、日用品がリーズナブルな価格で手に入る商店街があり、そういう点でもあの物件はとても恵まれていた。

でもまぁ、徒歩15分くらいの距離なら充分許容範囲内だけどね。

通勤に関しては楽できるのだから、それ以上の利便性を求めるのは贅沢というものだ。

看板に『朝10時から夜10時まで営業』と書いてあるし、位置的には駅とマンションの中間地点にあるような感じなので、平日の仕事帰りにもちょこっと寄れるだろう。

大通りの途中で横道に入り、そこからちょっと歩く事になるけど、どうせ外出しているんだから、そのついでに買い物も済ませてしまった方が効率的だ。
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