夢を忘れた眠り姫
しかし先ほど結論が出た通り、私は何かをコメントできるような立場にはない。
「ちょっと早いけど、用意ができたならもう行くか」
「はい」
貴志さんの提案に従い、ホテルに向けて出発することにした。
お互いになるべく出費は避けたいので、現地までは徒歩と電車で向かう。
しかし一緒にマンションを出はしたけれど、道中ずっと微妙に距離を取り、まるで他人同士のように振る舞いながら移動した。
万が一職場の誰かと鉢合わせしてしまった場合に、偶然居合わせた、という風に装えるように。
ホテルのロビーに到着した所で、ようやく至近距離まで接近したのだ。
「来た…」
いくつか設置してあるソファーセットの一つに腰掛け、出入口付近の様子を伺っていると、貴志さんがポツリと呟いた。
10時半頃に着いた私達より遅れること十数分、推定年齢50前後でベージュのスーツ姿の上品なご婦人が、内巻きにふんわりとセットしたボブカットを揺らしながら自動ドアを抜けてロビーへと入って来た。
「母さん」
何歩か進んで立ち止まり、周囲に視線を配り始めたその女性に貴志さんが右手を挙げつつ声をかける。
一瞬顔を綻ばせてこちらを見た彼女は、同時に私の存在にも気付いたらしく、すぐに眉をひそめた。
「初めまして」
お互いに歩み寄り、距離を詰めた所で先手を打って挨拶を繰り出す。
「ちょっと早いけど、用意ができたならもう行くか」
「はい」
貴志さんの提案に従い、ホテルに向けて出発することにした。
お互いになるべく出費は避けたいので、現地までは徒歩と電車で向かう。
しかし一緒にマンションを出はしたけれど、道中ずっと微妙に距離を取り、まるで他人同士のように振る舞いながら移動した。
万が一職場の誰かと鉢合わせしてしまった場合に、偶然居合わせた、という風に装えるように。
ホテルのロビーに到着した所で、ようやく至近距離まで接近したのだ。
「来た…」
いくつか設置してあるソファーセットの一つに腰掛け、出入口付近の様子を伺っていると、貴志さんがポツリと呟いた。
10時半頃に着いた私達より遅れること十数分、推定年齢50前後でベージュのスーツ姿の上品なご婦人が、内巻きにふんわりとセットしたボブカットを揺らしながら自動ドアを抜けてロビーへと入って来た。
「母さん」
何歩か進んで立ち止まり、周囲に視線を配り始めたその女性に貴志さんが右手を挙げつつ声をかける。
一瞬顔を綻ばせてこちらを見た彼女は、同時に私の存在にも気付いたらしく、すぐに眉をひそめた。
「初めまして」
お互いに歩み寄り、距離を詰めた所で先手を打って挨拶を繰り出す。