夢を忘れた眠り姫
「たとえ告白したのがあなたからだったとしても、付き合い始めてまだ数ヶ月しか経っていないのに同棲の提案にホイホイ乗って来たんでしょ?信じられないわ~。嫁入り前の娘がはしたない」

「……結婚を前提とした、お互いの内面を把握する為の同居だ。何ら恥ずべき事ではないだろ」

「だけどそれじゃあお見合いをする権利がなくなってしまうじゃないの!」


母親は身を乗り出し、興奮気味に言葉を繋いだ。


「『現時点で恋人はいないこと』というのが条件の一つなんだから。同棲だなんて問題外だわ」

「望む所だ。候補から外されたとして、俺は痛くも痒くもない。最初から受けるつもりなんてないんだから」

「何言ってるのっ。そうじゃないでしょ?だから今のうちに、さっさと別れてしまいなさいってことよっ」

「はぁ!?」

「相手に感付かれる前にこの子との仲は清算するのよ」

「バカか?そんな条件を出して来るような相手だぞ?見合いまで漕ぎ着けたとして、そのまますんなりと話が進む訳がない。興信所を使って俺の身辺調査をするに決まっている。同棲していた恋人を捨てたことなんて、瞬く間に調べあげられるぞ」


そこで私は『え!?』と思った。

候補だの興信所だの調査だの…。

貴志さんの所に来たお見合い話って、そんなに格式の高い壮大なプロジェクトだったの?
知り合いのお節介おばさんが気まぐれに持ってきた、というレベルでは到底済まなそうな…。
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