夢を忘れた眠り姫
「つくづく、とてもじゃないけど真守と釣り合いが取れる相手とは思えないわー」

「いい加減にしろ」


静かに、しかしむしろ怒りの感情が高まった事が窺える声音で貴志さんは言葉を発した。


「釣り合い?何様のつもりだよ。長年愛人の座に納まっているあんたが生んだ息子だぞ、俺は。むしろ、世間から後ろ指を指されるのは俺達の方だ」


私は思わず目を見張り、再度彼を凝視した。

次から次へと、衝撃の事実が目白押しにも程がある。


「つまりあなたの父親は二つの家族を養えるほどの甲斐性があって、そしてそれが許される立場にいるという事でしょう?」


母親は胸を張り、誇らしげに言葉を発した。


「愛人の一人や二人囲っていたからといって、それで立場が危うくなることもなく、世の経済の発展の為に貢献し続けて来た素晴らしい人物なのよ。そしてあなたはそんな人の息子なんだから」

「……やっぱり、考え方が歪んでしまうんだな…」


しかし貴志さんはとても憔悴しきったようにポツリと呟く。


「そういった生活を続けていると。……いや。元々歪んでいたからこそ、そんな恥知らずな選択ができたのか」

「何ですって!?」

「苦労して育てただと?笑わせんな。養育費という名目で、あの男に月々充分な手当てをもらっていたくせに。あんたはパートの仕事でお気楽に稼いでいただけだろ」

「父親なんだから当たり前じゃないの」
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