化学恋愛
7ℓ
ガラガラッ

俺は勢い良く実験室の
扉を開き、中に入った。
中にいたのは葛西先生だ。
しかし先生は教卓の後ろの
椅子に座って
顔を横にして伏せっている。
寝ているのか。
窓は開いていて、
風にカーテンがなびいている。
わずかだが先生の
長い髪も揺れている。

本当に好きだったのになぁ。

俺は先生の向かいに立って
先生を見ていた。

「何してるのですか」

ビクッッ

俺は反射的に実験室の
入り口を見た。
少女がいた。
気配がなかった。

「よ、よう」

俺は緊張しているのか
驚いているのか、はたまた
ドキドキしているのか、
心臓が高鳴ったまま
一言、声をかけた。
少女はスタスタと歩いて
生徒用の椅子に座った。

「お前はいつも何で
実験室に来るの?」

俺が聞いた。
__あなたに会いたいから__
何て言葉を期待している
恥ずかしい自分がいる。

「仲のいい人がクラスに
いないのです」

少女はそう言って
市販のサンドイッチを
小さな口で少しずつ
食べていた。

名前聞かなきゃ…。
そう思った時に自分の中で
3通りの選択肢が出てきた。

①名前教えてくれ
②君の名前は何ていうんだい?
③名前教えてくれたら飴あげる

「何です?」

少女が聞いてきた。
知らぬ間に見つめていたようだ。

「名前教えてくれたら飴あげる」

……………。
誘拐犯かっっっっ!

自分の言葉につっこんだ。
なぜ③番なんだ。
1番でいいだろっ

「莉緒です。佐伯莉緒です」

お、教えてもらった。
俺はとんでもなく嬉しい
気持ちで満たされた。

少女が手を出して言った。

「ん?」

俺が聞くと

「飴。」

…そっちが目的か。
俺はポケットの中に手を入れて
飴を取り出した。
つまらない授業のときとか
暇な休み時間を楽しむ時に
たまに食べている。

出てきたのはメロンの飴だった。

「ん」

俺は目をそらして
少女の小さな手に
その飴を置いた。

パァァァァァァ

っと少女の目が輝く。
飴が好きなのかな。

……さっきから名前聞いたのに
少女、少女って…
何て呼べばいいんだろう。
結局呼べない俺であった。
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