化学恋愛
9ℓ
科学恋愛 第9話

放課後、俺は部活を
していないので
そのまま家に帰る。
松木も俺と同じで
部活をしていない。
いつものように歩いて帰る。

ただ、いつもと違うのは
佐伯さんがいることだ。
俺と松木が歩いている
その後ろをトコトコと
付いてくる。

たまに後ろに目やると
無表情な顔が
目に入る。

「佐伯さん、飴いる?」

俺が言うとまた目を輝かせ

「いりますっ」

と言った。
ポケットから飴を一つ
取り出して手渡した。
佐伯さんは貰ってすぐ
外の包みを割いて
飴を口に入れた。

本当に飴が好きなんだなと
少し見ていると
横にいる松木が
ニヤニヤしていた。
腹が立って
松木の横腹に肘を当てると
「おふっ」と言って
少しうずくまっていた。

無表情だった佐伯さんの顔が
飴玉一つでとても幸せそうな
顔をなる。

歩いて帰ると
最初に俺、次に松木、
最後に佐伯さん
という順番で家がある。
歩いているうちに
俺の家の前に来たので

「じゃーな」

と言った。
松木は「おう!」と言い
佐伯さんは頷いた。

本当はもう少しだけ
一緒に歩いていたいけど
仕方ないことだ。
松木と佐伯さんは
そのまま歩いて行き
俺は玄関から家に入った。

いつものように課題をこなし
風呂に入り、ご飯を食べ、
テレビを見て寝る。
ただそれだけだ。

明日が楽しみ。
それが佐伯さんの
おかげであることは
嬉しくも悲しくもあった。
< 9 / 10 >

この作品をシェア

pagetop