ヘタレな野獣
鬼軍曹現る⁈
ピピピピ・・・
けたたましく目覚ましのアラーム音が部屋に響き渡る。
冬子は手探りで目覚ましの音を止め、思いっきり伸びをする。

「ん・・・」

ゆっくりと身体を起こしてベッドを抜け出し、カーテンを開ける。

「ん〜気持ちいい!」

太陽の日差しを全身に浴び、今日もいい天気になりそうだと、独り言を言いながら寝室を出た。



田崎冬子、30歳、三十路女である。


シャワーを浴び、トーストをトースターに入れ、昨夜ちぎった野菜の入ったボウルを冷蔵庫から出し、コーヒーをドリップする。

時刻は午前6時30分。いつも通りである。


しかし今日はいつもより少し早めに出社する。

この度、上司の突然の退職で、ひと月遅れの人事異動があり、課長補佐に昇進した。

勤続9年目、当たり前と言えばそれまでだけど、如何せん、当社は古い慣習が抜けず、男尊女卑の思想が未だ燻っている。

そんな中、女である冬子の課長補佐昇進は、異例中の異例だとか・・・

同期の鳴かず飛ばずの男性社員は、人事の誰それに色仕掛けで迫っただとか、上層部の誰それの愛人だとか、言いたい事をいっている。

言いたい奴には言わせておく、このポスト、実力で得たんだという事を、ゆっくり、じっくりわからせてあげる。



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