ヘタレな野獣
「怖いですか・・・
そりゃそうでしょう、ホンの数日前体験したんですから・・・」

「・・・課長?」
「!!!
何故いわない!僕は冬子の本音が聞きたい・・・」


腕を掴む手に力が込められ、私は顔を歪めた。


「お願い離して、雨宮君、痛いよ・・・」

はっと、我に返ったように、腕が解かれた。

「・・・・・」

「・・・
これでも私、本音、話してるつもりなんだけど・・・」


あまり広いとは言い難い玄関で、二人向き合い、下を向いていた。


「車の中で言った事、あんなのは本心じゃない・・・本当は冬子さんをあんな目に合わせた下柳と、こんなつまらない事に巻き込んだ小泉が憎くて憎くて、堪らないんです。
自分のした事は棚に上げて・・・」

「ほんと、勝手だよ・・・
あたしを騙してた癖に」

ゆっくり顔を上げて私を見るヨレヨレ君。


「下柳の事があったから、だから私に近付いたんでしょ?」

ドキドキしながら、私はそんな言葉を投げつけていた。

「言ってる意味が解りません、どういう事ですか?」

眉間に皺を寄せ、私を見ている。

「あんな事を私に言えば、私が君を意識して・・・隙が出来て、・・下柳が行動に移しやすくなる・・・」

「・・・あんな事?」


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