ヘタレな野獣
つられて私も笑みを零す。

そのままヨレヨレ君の胸に飛び込む。


ぎゅうっと抱き締められて私は再認識する。

大好き、雨宮君・・・


「おじさん、ありがとう」


抱き締める私を解放して、雨宮君はお父さんに声をかけた。


「お父さん、ありがとうございます」


深々と頭を下げ、私達は小泉家を後にした。





「冬子さん、これから何か予定はありますか?」


車で来たと言う雨宮君は、帰る方向が同じだからと私を送ってくれると言う。



「別に、だって今日は…ずっと正君家で過ごすと思っていたから・・・」




「・・・アイツの墓参り、行きませんか?」


唐突だった。


「出来れば僕は冬子さんと一緒にアイツに報告したいです」



さっきからずっと繋ぎっ放しの右手、雨宮君は自身の左手にグッと力を入れた。



「とにかく車に乗りましょうか」


彼に促され、助手席に乗り込む。


道中お花屋さんで花を買った。


お寺の駐車場に車を止めて車外に出る。


無言のまま、雨宮君の後に続く。


正君の眠るそのお墓には、きっとお父さんが供えたのだろう、真新しい仏花があった。



親より先に墓中に眠る息子・・・


お父さんはどんな気持ちで墓前に参っているのか、考えただけでも切なくなる。



「まさ、・・・また一年経っちまったな・・・
俺、もうお前より三つも歳食っちまった・・・」



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